母親から聞いた話

 母親が亡くなって 2回目のお盆が過ぎた

生前 母親とは これと言って 会話した覚えは無い

母親から一方的に 話しかけて来て 覚えているくらい

 父親が遠い現場で 仮設宿舎を建て 食堂も併設(飯場

そこに 母親が 俺たち子供が休みの時 同行する事が有った

職人さんたちが 晩飯 晩酌後 話が盛り上がり 親父の話

「親父が 髪の長い女と・・・」

食堂の裏側で 母親は はっとして自分の髪に手を当てたと言う

髪を切ったばかり ショートカットだったとの事

俺は子供だったが 何か月に1度帰るくらいの父親に それくらいの事は

想像出来た

母親も 現実に話を聞いて ショックだった様だ

 

現場の手伝いをしていた母親が 様子がおかしい事に 気づき 仮設宿舎を

のぞいたらしい

そこで 現実を見たらしい 

包丁だろうか 間一髪で刃傷沙汰のところ

 

父親が亡くなって22年後 母親が91才 最後の半年 同居介護した

俺が覚えている母親の言葉は

「元の一人暮らしに 戻りたい 自由が良い」だった

喪主の俺の挨拶は 「これで 本当に自由にしてやりたいと思います」