父親が泣いた時

俺は小学校 低学年くらいから 家を出たかった

父親が まだ月に1〜2回 家に帰っていた頃

帰るたび 飲んでいて 皿を投げて割るし

母親を 怒鳴り散らすし 殴る蹴る

だが 子供の俺が家を出ても 稼ぎがない

中学で授業の合間にも勉強していて

女子生徒に 「○○君(俺の名前)は 何の為に

勉強するのか」と大声で問われ

「将来 飯を食う為」と即答した

一日も早く 家を出たかった

就職は遠く 関東が希望だった

父親が地元の会社の面接を段取りした

地元の会社 社長と握手したが

決心は固かった

就職で夜行列車に乗る為に 送ってくれた

両親と ろくに挨拶も 交わさず 別れた

長男と 駅で別れ 帰りの自家用車の車中

父親が「もう 帰って来ないだろう」

と 泣いていた事を 後になって母親から

聞いた

全く その通り 二度と帰る気は無かった

だが 父親が 別の人と別宅を新築 同居して

自宅には 全く帰らなくなった事を聞いて

母親もそうだったと思うが

俺も 安心して帰省する様に変わった

二度目は俺の結婚式

司会を部活の先輩に して頂く事になった

この先輩は 学生時代の部活

夏休みの合宿後半 全員 バテ気味

午後の稽古開始の時

ドリフの 「ほんとに御苦労さん 」の調子で

「嫌じゃありませんか 練習は」

と 歌って ドット受た

キャプテンから「気合いを入れるんだ」の

一括

その先輩が結婚式で 「母さんが夜なべをして

手袋編んでくれた」を 歌うので

新郎新婦で それぞれの母親の肩叩きを

する様に言われた

変な アトラクションだなと思ったが

先輩の提案なので 実行した

写真を後で確認すると

後方で先輩がマイク片手に歌うのをバックに

手前の父親がハンカチで 涙を拭いていた

合計 2回