裁判所調停1998

 24年前 父親の葬儀を済ませ 次は四十九日と言う頃

裁判所から調停の呼び出しが来た

父親が亡くなるまで同居した 別の人だ

よし 受けて立つ

父親は 籍をそのままにしていたので 定期預金が下せなくなったのだ

相手は弁護士を雇い同席

我が方は 相続代表者 俺一人のみ

 

銀行から それ以前に電話は有った 俺は 全て向こうへ と言ってあった

だが銀行が口座凍結した 定期預金¥10,000,000くらいの件だった

危篤となった時 俺の方で 付き添いをしてくれと 言ってきたので

これで 見納めと 母親と弟に2回ほど 付き添いを頼んで 引き受けてくれた

この時に それらの引き出し 手続きを済ませていたはずだと 思っていた

手続き出来なかった定期だ

 

個別の面談で 俺は裁判官に

1 向こうが 父親が亡くなって停止手続きをしていないから 

  父親の年金の入金が止まっていない

  これは こちらで止めた

2 町役場から事業資金として¥5,000,000くらい借り入れがあるのが こちらに

  連絡がきている 

  共同事業をして来たと言うのだから 債務は 一切そちらだ 当然だ

  こちらに連絡が来ることが無い様に すぐに手続きをする事

3 定期の金利等 こちらに連絡が有ったから そちらへ と言う事で話済だ

  

調停で 「生前の債務一切を向こうで」と しるされた

  

おかげで これ以降 もめなくて良くなった 結果オーライ

書記官が合意文書を読み上げている時 父親の名前を読み間違えた

俺は その場で大きい声で 初めて発言した 父親の 名前の読み方は〇〇です

相手側は 一言も発しなかった

帰り際 裁判所玄関を出た所で 相手が後から俺の横に並んだ

ちらりと相手側を見ると 全く俺に気付いていない

がっかりとした様子で トボトボと帰って行く後姿を 俺は見ていた

遺族年金も手続きしなかった 当然だ 

 

 その1ケ月後くらい 今度は 相手の娘から電話が来た リターンマッチか

車両の廃車手続きの同意書に 俺と 母親 弟 妹に 署名 実印捺印

印鑑証明添付を言って来た

会社に相手の娘が入って来た時 俺は直ぐに 相手だと分かった

事務服でもなく スーツでもなく 割烹着だった 家での介護か何かで

忙しいそうな姿にみえた

同意書を見せられてすべてを理解した 同意する その内容欄が空白だった

よし分かった

俺が ボールペンで 同意書の内容欄に

「車両1台の廃車手続き 以上」と書いてから

家族全員の署名 捺印 印鑑証明をそろえた

 

再度 来社した相手を 応接室に通し 恭しく そっと同意書を見せた

その瞬間 相手は がっくりした様に肩を落とし 静かに帰って行った

あれから24年 縁は切れた 

 

最近の戸籍謄本は データーのプリントアウトだ

ただ 昔の手書きの戸籍謄本には 父親の名前の上に Xがしるされ 

死亡届け人 〇〇〇子と 相手の名前が記入されている

相手は かなり手強い

 49日 寺で家族 親族6人居ると 坊主が 斜に構えて「 何だ お前らは」と言う目付きで こちらを睨んで入場して来た

 終了して帰り際 喪主の俺から挨拶代わりに

 それでは 墓を新しく建てたのでこれから納骨すると言った

その途端 、坊主の態度が一変した。 急に低姿勢となり、俺を引き止めた。 持って帰ろうとした、親父の遺骨を少し、 広げた布の上に分けてくれ、と言う。 全てを理解した。 別の人から坊主に 、何も悪い事はしていない、こちら側の事を、延々と 有る事、無い事、電話で聞き、入場シーンのあの目付きだったのだろう 「てめえ 最初の目付きは、何だ。 墓を建てて無い俺が、遺骨を ここに置いて帰ると思っていたか」と言おうとしたが、よくぞ我慢したものだ。 受けて立つ。 坊主に、もういいです、もういいです、と何度も何度も言わせて、「これくらいにして置いてやろう」と半分を切ったくらいで、やめてやった。この寺とは、22年後、母親の葬儀で、 代替わりしていたが、リターンマッチする。