心臓の痛み1990

現場が多かった頃のサブは新人

中には 調子が悪く 帰ると言い出す野郎も

問い詰めると 昨夜 ○ブ ホテルに入ろうとして

ナビシートの人にハンドルを回され物損事故

フロントガラスが洗面器型に膨らみ

救急車の中で 車酔いで吐きそうだった

頭には異常無し

そんな野郎もいたサブと3億現場2人で2現場 納めた後

公共の3億 今度のサブは 新人ながら優秀

だが 連続3年間くらい 命がけの現場

今回は積雪60cm -8℃の冬場を乗り越え

いよいよ 絶対にずらせない年度末工期

年度末工期は絶対厳守だ 当たり前だ

だが 36才 体の限界を 思い知った

怖いもの無しの年齢 時代背景だったが

外構工事の捨てコンの上に墨出し中

心臓がドカンと痛くなった

膝から崩れ 左手で心臓を押さえる 痛い 痛い

サブの○○君は「□□さん(俺の名前)、何を芝居してるんですか」と 平然と言った

「馬鹿野郎 俺は本当に痛いんだぞ」

ここで 鉄筋屋の棒芯が 俺に 叱咤激励の言葉を

投げ掛けて くれた

「早く墨を出せよ 帰るぞ」

この言葉を聞いた途端 俺はアドレナリンが

全開 墨出しを終えた

直ぐに 山奥の現場近くの総合病院に一人で

運転して飛び込み受診した

病院に向かう車中 過労による心筋梗塞

何かか ここで入院したら 俺が いないと

現場が 納まらない 検査書類作成も

年度末工期は 厳守だ

病院から 絶対に現場に帰る

あれだけ 思い詰めて 痛い心臓で運転して

よくも交通事故を起こさなかった

症状を伝えると夕方にもかかわらず

直ぐにレントゲン 両手 両足を固定して

診察台が グルグル回転した

「異常無し」

現場に帰る事が出来た

人間限界が有る それから38年間くらい

心臓は異常無し